はじめに
こんにちは!リクロスの木藤です。
今回は企業インタビュー第五段としてYさんにお時間をいただきました。
市役所を経験し、現在は営業職として自治体営業をされているYさん。企業名や具体的なサービスは非公開ですが、同じ自治体&自治体営業経験者としていろいろ伺ってみました。
それでは早速見ていきましょう!
インタビュー
経歴
木藤:Yさん、本日はお時間をいただきありがとうございます。早速ですがこれまでの経歴を教えてください。
大学を卒業後、新卒で市役所に入庁しました。最初は税務課で税金の徴収業務を担当し、滞納者の方々とのやり取りに苦労する中で、税金の使い方などの大切さを強く実感しました。
その後財政課へ異動し、予算編成に携わりました。査定はもちろんのこと、予算編成方針の作成も担当し、全庁向けの説明資料の作成などもしましたね。
木藤:財政課を経験されたのですね。私は自治体営業の支援をやっていますが、強いて言うなら財政課の経験があっても良かったのかなーとかたまに考えています(笑)
市役所を辞めてからは複数社で自治体営業を経験しており、今のところは自治体営業を軸にキャリアを積んでいこうかなと思っています。
私自身も経験していた財政課への営業活動が多いです。
想定内だったこと
木藤:次に、自治体営業を経験してみて想定内だったことについて伺えればと思います。
先に私から申し上げますと、あまりに想定内すぎるのが想定外でした。自治体営業していて驚くことが少ないと言いますか。
リクロス創業前は自分が勤めていた市役所の経験しかなかったわけですが、いろいろな自治体へアプローチしてみて、「どの自治体もルールがほぼ同じだから、それに沿う形で職員の方の反応も同じだ」と強く感じています。
自治体営業は1自治体を極めればかなり汎用性が高いなと思いますね。
私が自治体営業をやってみて想定内だったのは、「元自治体職員なんですよ」と言えば打ち解けられる点ですね。
自治体ってお互いが競合って感じではないじゃないですか。なので普段から自治体同士のネットワークが強く、情報共有も活発です。
同じ自治体職員に対しては親近感のようなものがあるので、「元自治体職員です」と伝えて関係構築していますね。
木藤:すごく分かります。元自治体職員しかできないテクニックですが。自治体営業におけるインバウンド営業の記事でも「自治体向けサービスはクチコミがネット上にほとんど掲載されていないので、他の自治体から情報収集することが多い」とも書きました。
そのほかに想定内だったのは、「サービス導入によって何ができるようになるのか」といった部分がシンプルであることですね。変化する点が明確な方が話を進めるうえで大事といいますか。
木藤:自分も同じように感じています。通常の法人営業よりも「このサービスを通じてこんな世界観を実現します!」というのが響きづらく、「このサービスを導入すればビフォーアフターがこうなります。今はこの業務に○○時間くらいかかっていると思いますが、それが半分になります。」などといった形で落とし込むのが重要だなと。
ありたい姿やあるべき姿を啓蒙するのは営業において重要だとは思いますが、自治体は特に予算編成プロセスが長いので、関係者全員を啓蒙するのはなかなか難しいです。
個人的には「資料が一人歩きしても論理で関係者を納得させられる」のを目指すべきかなと思っていて、ありたい姿やあるべき姿を資料に含めてもいいですが、「今はどういう状況で、サービスを導入したら定量的にこうなる見込み」という、地に足のついた部分も含めるといいんだろうなと思います。
想定外だったこと
木藤:想定外という観点ではいかがでしょうか。
想定外だったのは、財政課職員の考え方の違いです。
私自身財政課を経験し、「財政課職員は自治体の経営企画的な役割を担っている」と考えていましたが、実際には日々の仕事に追われているケースが多く、必ずしも長期的なビジョンを持っているわけではないと感じました。
木藤:行政は「2040年問題」や「5か年計画」など公表することも多いですが、実際に職員が長期視点を持って課題解決に向け動いているとは限らないですよね。
自治体は人事異動が早いこともあり、多くの担当者は「今年度と来年度」が頭の大半を占めているので、なぜ今話を聞くべきでなぜ次年度実施すべきなのか、しっかり訴求すべきだと思います。
さらに言うと、部署間だけでなく部署内での係移動、係内の担当替えがあるので、1,2年で担当者が変わるくらいの認識で営業活動した方がいいと思います。
そのほか、首長へのトップ営業は思ったより効果がないと感じました。
自治体の首長や部長が「これを導入したい」と言っても、現場の理解がなければ進まないケースが多いです。
木藤:トップ営業でうまくいく場合もあるかもしれませんが、商材によって合う合わないありますね(別途記事にします)。基本的には、地道に目の前の担当者に向き合って話を進められればOKという認識です。
プロパーから当選した首長であれば現場理解が比較的深いですが、そうでない方だと理解がないまま号令してしまうので、話が折れる傾向がある気がしますね。
自治体営業のアドバイス
木藤:そのほか、自治体営業のアドバイスをいただければと思います。財政課の経験もあるということで、その視点からアドバイスいただけますでしょうか。
新規事業について話しますと、まずは「やるかやらないか」を判断しますね。その際、人命に関わったり国からの指示が強かったりすると「やる」判断になりやすいです。
次に「どう実施するか」の判断になりますが、費用対効果やランニングコスト(将来的な負担)、財源確保の有無、スケジュール設計、担当部署のマンパワーが足りるか、そもそも行政がやるべきなのかなどチェックしていました。
なかなか予算要求課がこれらをしっかり押さえられていないこともあるので、営業資料に盛り込むなどして企業側も努力できると良さそうです。
木藤:自治体営業の資料については私も記事を書きました。そのほかに何かありますでしょうか。
単価が高く導入に時間がかかる商材は、自治体の計画などを根拠にすべきですね。
逆に単価が低く導入が容易な商材は、一つ一つ計画を読み込むというよりかは、シンプルに導入メリットを訴求すればいいかなと思います。「手軽さ」「導入コストの低さ」ですぐにスケールするサービスとかありますよね。
木藤:明確に単価感を示すことはできないですが、同じ意見です。「導入に100万円かかりますが、1年あたり200万円コストカットできる見込みです!」といった商材であれば、計画に記載がなくても導入を検討してもらえるはず。
あとは、予算要求課が財政課からの質問に耐えられるように営業資料に「よくある質問と回答」を入れると良いかなと思います。FAQの一例ですが、
「このシステムを導入するとどんなコスト削減効果がありますか?」
「導入後のランニングコストはどの程度かかりますか?」
「スケジュールはどのように進めるのが一般的ですか?」
とかですね。大手で採用している企業を知っています。
木藤:それは予算要求課にとっても助かりそうですね。今日はいろいろ教えていただきありがとうございました。またいろいろ教えてください。
ありがとうございました。