自治体営業におけるトップアプローチ(首長や部局長)について

目次

はじめに

こんにちは!リクロスの木藤です。

今回は、自治体営業におけるトップアプローチについて書いていきます。

自治体営業の支援会社としてこれまでいろいろな企業様の自治体営業を見てきましたが、自治体へのアプローチ手法としては、電話やメール、FAX、飛び込みが一般的です。

そういった状況の中、トップアプローチをうまく活用されている企業様もいますので、トップアプローチについて記事としてまとめていきます。

それでは早速見ていきましょう!

トップアプローチとは

トップアプローチとは、意思決定権を持つ首長(都道府県知事や市区町村長)や部局長に直接提案を行う営業手法です。

自治体の意思決定プロセスは一般的に多段階でして、通常は担当レベルでの協議を経て最終決裁者の承認を得る形になります。

しかし、前例踏襲や横並び(他自治体の実績がその自治体の実績を呼ぶ)の部分がある自治体に対して、真正面から営業活動しても厳しい時もあるのが実情。

自治体ビジネスに取り組む企業様も「結局は自治体担当職員のやる気や熱量に左右される部分が多い」とよく仰っており、私も同じように感じる場面が多々あるのが正直なところです。

それを打開する選択肢の一つであるトップアプローチについて、まずはメリットデメリットを見てみましょう。

トップアプローチのメリット

メリットを3つ挙げます。

意思決定が早い

通常のボトムアップの営業と比べ、意思決定は早まります。

あくまで一例ですが、ボトムアップだと以下の流れで話が進むでしょう。

  • 担当課へアプローチ
  • 担当課が関係者(他の部署や、公共施設の現場など)と調整
  • デモ
  • 導入の意思決定

これがトップアプローチであれば、

  • 導入の大まかな意思決定
  • 担当課と関係者が「導入する」という前提で調整する
  • 問題なければ導入する

といった場合もあり、導入を前提に話が進むかどうかで導入の至りやすさが変わってくるのが分かるかと思います。

大規模な契約に結び付きやすい

トップ層が関与することで広範囲での導入などに繋がりやすくなり、自然と単価は上がりやすくなります。

多くの民間企業と同様に自治体も決裁額と意思決定者の役職が相関するので、そういった意味でも単価が上がりやすいでしょう。

競合を排除できる可能性がある

トップアプローチから話が進んだ場合、話が折れてしまっては元も子もないので、営業した企業と(も)仕様書を作成することが多くなると思われます。

自治体は原則競争入札なので、一社随意契約になるかどうかは自治体の判断になりますが、仕様書作成から入り込むことで結果的に落札に繋がりやすくなるでしょう。

トップアプローチのデメリット

次に、デメリットを3つ挙げます。

ハードルが高い

そもそも首長や議員、部局長とのアポイントを取ること自体が困難ですので、通常の営業とは異なるやり方が求められます。

現場の反発リスク

自治体に限らず、「上層部に言われたからやる」といった案件は現場の反発リスクがあるでしょう。

特に首長や議員は元自治体職員でない場合も多いので、現場や実情が分からず意思決定してしまう可能性があります。

「強烈なトップダウンの意思決定」は組織をガラッと変えるには有効ですが、その分反発力が大きくなるのは間違いないでしょう。

トップアプローチした後は、丁寧に現場をフォローするような形で進めることを意識してください。

レピュテーションリスク

行政は税金を扱うことから、透明性や公平性を非常に重要しますし、住民からもそれを求められます。

ただでさえ政治に関わるいろいろなスキャンダルが注目される世の中ですので、首長や議員への個別アプローチにおいて細心の注意を払わないといけないのは言うまでもないでしょう。

自治体営業におけるトップアプローチのやり方

次に、トップアプローチのやり方についてです。

事例が豊富ではないので、以下をベースにアプローチ方法をご検討いただければと思います。

誰にアプローチするか

正解はありませんが、私であれば以下2点を踏まえてアプローチ対象を決めます。

  • 発信者かどうか(SNSなど)
  • すでに繋がりがあるかどうか

首長や議員がSNSで自社サービスと関連がありそうな投稿をしていたり、首長や議員とすでに繋がりがあれば、そのままアプローチし、そうでなければ担当部局長へアプローチしてみるような形です。

政治との関わりは上述のリスクと隣り合わせですので、少しでも迷ったら担当部局長にした方がよいでしょう。

いつアプローチするか

特段これといった時期はありませんが、議会の時期(3の倍数の月)などの繁忙期は控え、あとは自治体営業のスケジュールも念頭に置いてアプローチしましょう。

どのようにアプローチするか

実際にトップアプローチされている企業様は、手紙やSNS、その他(紹介など)で接点を持つことが多いです。

通常の窓口部署への営業と異なり、電話やメール、問合せフォーム、FAX、飛び込みなどは相手にされない可能性が高いです。仮に相手にされても印象は非常に悪いでしょう。

手紙やSNSの文面については、自治体営業だからといってこれといった工夫は必要ありません。自治体HPや計画、SNSの発信内容などを踏まえてオーソドックスに営業文面を作成しましょう。

トップアプローチに向いている商材

次に、トップアプローチに向いている商材についてです。当てはまる数が多いほどトップアプローチに向いていると考えます。

公約や施策、SNSの発信内容と合致する

発信内容がそのまま興味と一致するのは言うまでもないでしょう。

発信に常にアンテナを張り、それを元に自社でできる提案をしてみてください。

新規性が高い

新規性が高いサービスは、行政の前例踏襲や横並び主義と相性が良くありません。

「これを100万円で導入すれば人件費込みで150万円の削減見込みです!」といった分かりやすく地に足のついたサービスであれば現場で判断しやすいですが、ありたい姿やあるべき姿に向けた啓蒙が必要なサービスは、同じくビジョンを語る立場のトップへアプローチした方が成果が出しやすいです

ただし、特定の部署がスタートアップを支援している自治体もありますので、トップアプローチとは別の手法として、担当部署へのアプローチもご検討ください。

関係者が多い

関係者(複数の部署や、公共施設の現場など)が多くなるサービスの場合、どこかしらで話が折れる可能性が高くなります。

トップの号令とともに「サービスを導入したら○○という状態になる」という共通認識を持ってもらい、前向きに導入を検討してもらうとよいでしょう。

最後に

自治体営業におけるトップアプローチについて書いてきました。

法人営業ではSaaSを中心にトップアプローチが増えてきていますので、自治体営業においても今後少しずつ増えていくと思っています。

自治体営業に限らず広く情報収集し、日々の自治体営業に活かしていただければと思います。

この記事を書いた人

1994年生まれ。東北大学を卒業後、豊橋市役所へ入庁。文化課と中央省庁出向を経験後、リクルートで法人営業に従事。その後、株式会社リクロスを創業し、自治体営業の支援に取り組む。

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