はじめに
こんにちは!リクロスの木藤です。
今回は読書メモvol.1として、『地方自治体への営業 実は「お役所」こそが、ビジネスチャンスの発信地』について書いていきます。
自治体営業がニッチなテーマということもあり、ダイレクトに自治体営業を扱った書籍も少ないのが現状。
そのような中、新潟市職員と新潟市議会議員を経験した著者が執筆したのが本書になります。
私も普段自治体営業を支援する中で、公務員時代の知見が役に立っていると感じますが、本書を読んでみると同じ元公務員として「同じことを考えているな」と思うことが多々ありました。
というわけで今回は、公務員を経験したからこそ「たしかに」と唸ったことに絞ってメモを書いていきます。
よろしくお願いいたします!
メモ
“年齢の高い人が、その部署を牛耳っているとは限らない”、”若い職員を侮ると、痛い目に遭う”
「キーパーソンは役職が上の人とは限らない」のは、民間企業でも自治体でも言えるでしょう。
以前の記事にも書いたとおり、自治体職員はやろうとすれば以下のことができてしまいます(やろうとすれば、です。念のため)。
- 随意契約している事業者以外の話は一切聞かない(お断りする)
- 仕様書を確認してもらうのは意中の一社だけ
- 予算が確保できたことを伝えない
- 公示したことを伝えない
自治体営業に限らず対人関係全般に言えますが、綺麗ごと抜きにして、役職に関わらず全ての方に丁寧に接しましょう。
“一つ攻略すると、次がやりやすい”
実績が実績を呼ぶという話です。
本メディアで何度も書くと思いますが、同じ都道府県内の実績と同じ人口規模の実績は鉄板の説得材料です。
なお、自治体営業の営業先は1,700自治体程度に限られていますが、新サービスがダメだった場合に早く撤退の判断ができるので、ある意味では良い点だと思っています。
そういった意味でも、企業の皆様には気軽に自治体ビジネスにチャレンジしていただきたいと思います。
“一生懸命頑張る職員は必ずいる”
これは間違いないです。自治体に勤める職員の方ならほぼ100%同意してくれるのではないでしょうか。
一方で、営業の際に自治体担当者のやる気に左右されるのはどうしても否めません。
一般競争入札であれば金額をもって機械的に事業者が決定しますが、予算要求前の段階においては「機械的」とは真逆の「人間対人間」の世界です。
担当が変わるのを待たずとも、意識的な関係構築により急に話が進展することもあります。
自治体や自治体職員、住民の役に立つ情報提供など、地道に活動していきましょう!
“職員の負担軽減に繋がるような商品やアイディアは、「職員は頑張ってもインセンティブは少ない」、「職員は怠けても解雇されるほどのペナルティは少ない」という性質とも相まって、とても受け入れられやすいと言ってもいい攻略法の一つ”
こちらも間違いないでしょう。
こちらのインタビュー記事にもあるとおり、導入後に負荷のあるサービスであってもやる気のある職員は必要だと思えば導入に向けて動いてくれる傾向にある一方で、あまり熱量のない職員であっても自身の業務が楽になるのであれば予算要求しない理由はあまりないかと思います。
(補足するまでもないと思いますが、構造的にインセンティブがどうしてもないので、熱意のない職員の方を批判する気持ちは一切ありません。むしろ、職員のやる気に関わらず一定品質の行政サービスを届けるのが行政の役割であり、素晴らしい点だと思います。)
なお、財政課を経験したことのある知人からも、「100万円支出することで結果的に100万円以上浮くことが数字で説明できるのであれば、予算をつける査定をしない理由がない」と聞いたことがあります。
“地方自治体がモノやサービスを調達するためには数えきれないほどの法令や規則があって、自ら積極的に特定の企業だけのモノやサービスを取り入れることが難しく、必然的に地方自治体の職員は、民間企業からの提案を「受け」の姿勢で待つことになります。”
こちらも同様の認識でして、少し別の視点で書かせていただきます。
事業者選定プロセスにおいて、自治体担当者にとって「この事業者様にお願いしたい」という事業者が基本的にはいます。多くの場合、仕様書を一緒に作り上げた事業者になると思います。
そのような場合において、わざわざ他の多数の事業者と深い関係を築くことはないでしょう。規則にある最低限の数字(最低3者から見積書を徴取、など)を満たして、できるだけ意中の事業者にしたいと思うのがむしろ普通です。
そういった意味でも、受注に向けて民間企業の営業力は非常に重要な要素だと言えるでしょう。
もちろん、最終的には最低価格落札方式で機械的に金額で決定したり、プロポーザルで複数名の選定委員により事業者を決定したりするので、事業者選定プロセスで担当者が意図的に事業者を決定することはできません(していたら不正です)。
“これからの行政は民間の力なしには成り立ちません。”
サイト紹介に記載したとおり、完全に同意です。
自治体職員の方も当然その地域に貢献したいと思っているはずですが、法令や規則により制限があるのは間違いありません。
そういった中で、民間の優れたサービスを自治体に届けることは、自治体を良くするための非常に有力な手段になると思います。
リクロスとしても、そういった民間企業様の営業支援という形で、全国の自治体に貢献したいと改めて思いました。
最後に
本書を読んでみて改めて、現時点(2024年9月)における自治体営業の最良の入門書だと感じました。
私も元公務員、そして自治体営業を支援する立場として、今後も良い情報発信ができたらと思います。
今後ともよろしくお願いいたします!
1994年愛知県豊橋市生まれ。東北大学卒業後、新卒で市役所へ入庁。文化課や中央省庁への出向、転職してリクルートで営業を経験後、株式会社リクロスを創業。リクルート出身のメンバーを中心に自治体営業の支援に取り組みつつ、自治体営業プラスを運営。