はじめに
こんにちは!リクロスの木藤です。
今回は公務員インタビューvol.2として、Rさんにお時間をいただきました。
防災関係部署を5年経験して現在は営業職としてお勤めとのことで、私と同じく公務員と営業を経験されたRさん。
「もし自治体営業をやるとしたら」という想定でお話を伺ったところ、意見があまりにも一致しすぎて驚きました(笑)
自治体ビジネスに取り組まれる企業様は必見ですので、早速見ていきましょう!
インタビュー
これまでの経歴
木藤:Rさん、本日はお時間をいただきありがとうございます!早速ですがこれまでの経歴をお聞かせいただけますでしょうか?
私は元々公務員として5年間勤めました。その後民間企業へ転職し、現在は営業として働いています。
公務員時代は防災関係の仕事を担当し、特に地域社会を巻き込んだ防災教育やプロジェクトに力を入れていました。
木藤:私が市役所在籍時に防災レンジャーみたいなものがあって地域で啓発活動をやっていましたが、そんな感じですかね。
そんな感じです。防災は役所の中でも自由度が高く、新事業や新企画をどんどん立案できましたね。
木藤:防災を経験できたのはキャリアの中でも貴重そうですね。テキパキと仕事ができる優秀な方が配属されるイメージです。
地域の小中学校やママさん団体、自治会などを巻き込んだ防災教育プログラムを立ち上げ、それが最終的にはNHKにも密着取材されるほどのプロジェクトとなったので本当に貴重でした。
防災関連の組織への出向も経験し、それも良い経験でしたね。
防災関係部署で営業を受けていたサービス
木藤:防災ではどのようなサービスの営業を受けていましたか?
けっこう営業の数は多かったですよ。サービスについては大きく分けると計画策定系、情報システム系、防災備蓄品や物品関連ですね。
計画策定系サービスは、防災基本計画や避難計画、受援計画など、法律で作成が義務付けられている計画の策定支援サービスです。防災に関わる新しい計画が次々に出てくるため、その都度対応が必要でした。
情報システム系サービスについては、災害時の安否確認システムや、災害情報の共有・連携をサポートするクラウド型のシステムの営業を受けましたね。
木藤:ありがとうございます。ちなみに営業が来るのは市の防災関係部署だけでしょうか?外郭団体とかはあまりない印象ですが。
外郭団体はなかったので市に営業が来ていましたよ。
営業を受けていて感じたこと
木藤:公務員として営業を受けていて感じたことを教えてください。
まずは予算策定の時期を押さえてほしいですよね。
次にクロージングのスケジュール感で、企業様はクロージングを急ぎすぎな印象でした。私が良いサービスだと思っても、係長や課長補佐に相談してOKをもらって、そこから課長、部長を経てやっと予算要求できます。
木藤:この辺りの情報ってネットで調べれば出てくると思いますが、それでも分かっていないような企業様が多かったのでしょうか?
分かっていない所は全然ありますね。ただし、継続的に案件を受注している企業様なんかはやっぱり地道に営業しています。
木藤:その他はいかがでしょうか。
やっぱり実績とセットで話を持って来てほしいですよね。
木藤:鉄板ですね。ちなみにRさんの自治体ではどの範囲の実績を求めていましたか?
木藤さんがいた愛知県で例えると、東三河地域の中心である豊橋市の実績ですね。県よりかは細かい区分で尾張地方(名古屋)、尾張地方(知多)、三河地方(西三河)、三河地方(東三河)とかあるじゃないですか。
木藤:県内の実績ではなく、東三河の豊橋市の実績なんですね。
そうなんですよ。豊橋市からすると、中核市なので岡崎市や豊田市、(県外ですが)浜松市などの実績があると安心なんでしょうけど、人口5万人以上くらいの”その他の市“だと、県より狭域の、人口規模が大きい中核市などを意識しますね。
木藤:すごく勉強になります。自分自身フラットに自治体営業の支援をしているつもりでしたが、やっぱり自分がいた市役所の常識に染まっていたんですね。
やっぱり人口規模の小さな自治体はどうしても保守的になりますね。
豊橋市や豊田市、岡崎市なんかは「県内初の取り組みです!」といったものを狙って予算を確保するかもしれませんが、小さな自治体はお金をかけてのチャレンジはなかなかしづらいです。お金がかからなければどんどんチャレンジできますが。
木藤:お話を聞いて、自治体営業に取り組む企業様のアプローチ優先順の目安がよりくっきりしてきました。
一言で言うなら「都道府県より狭域の、その地域の中心となる市から狙え!」ですね(もちろんサービスによります)。
東三河の中心である豊橋市から受注できれば、東三河の他市町村(豊川市、蒲郡市、新城市、田原市など)の受注に繋がりやすくなる。
そして、他地域の中心となる市(岡崎市や豊田市など)にも展開しやすくなり、そこから西三河全体にもどんどん広がっていく。
岡崎市や豊田市、豊橋市で導入されれば、より大きな名古屋市や(静岡県)浜松市などの政令指定都市にも導入されやすくなって、さらに県も攻略しやすくなる。
実績の積み上げは大事だけれども、それは「人口規模の小さな町や村からアプローチする」とは必ずしもイコールではなく、まずは地域の中心となる市にアプローチすべき(繰り返しですがサービスによります)。
一人でかなり話してしまいましたが、自分の中ですごく腹落ちして興奮しています(笑)
小さな自治体からすると、条例などを改正する際に地域の中核市を参考にできますし、「中核市がやっているなら安心だよね」というのは間違いなくあります。
木藤:もしかすると、防災は人の命に関わるからより保守的というのはあるかもしれませんね。
商工観光課とかだと積極的に新しい取り組みがある印象ですね。
木藤:たしかに。民間との関わりが多いので、自然と一歩二歩進んだ取り組みになるのかもしれません。
もしRさんが自治体営業やるなら
木藤:先ほどの「営業を受けていて感じたこと」と関連の深い質問になりますが、もしRさんが自治体営業やるとしたらどのように取り組まれますでしょうか?
まずは予算策定の時期や実施計画を把握します。実施計画に載せるような予算規模の案件であれば、予算要求前の夏だけでなく、そのさらに前年度の秋から関係構築しますね。そして、人事異動が落ち着いた4月第2,3週からさらにアプローチしていきます。
木藤:予算要求直前の6~9月に1回だけアプローチする企業様もいる中、前年秋に始まって、4月からじっくりやるんですね。
あとは、担当者が優秀であればそのまま担当者と進めますが、そうでないと感じたら早い段階で課長補佐や課長まで巻き込んでいくと思います。
木藤:優秀かどうかも大事ですし、担当者の熱量もかなり重要ですよね。
ほぼそこ(担当者の熱量)だと思っていて、対面の担当者が熱意を持って自治体内部で動いてくれるかは本当に重要ですね。そのためにも関係構築が必要です。
木藤:関係構築という言葉を複数回いただきました。最近自分もXでかなりポストしているのですが、関係構築は当然重要なんですよね。
しかし、当たり前のはずが、自治体営業に関する発信が自治体の知識のことばかりで「予算要求は○月頃!だからその前の○月にアプローチしましょう!」という発信になってします。
もちろん内容としては間違いないのですが、それを「チャンスは年に1回で、その時期だけアプローチすればOK」みたいに捉えられているのは大きな問題だと思っています。
このメディアを始めて自治体営業について考えていく中で確信しましたが、自治体営業で大事なのは「自治体の知識」ではなく「営業の基本」です。営業の基本とは、接点を増やすとか、相手目線に立つとかそういったものです。知識ばかりにフォーカスされて、対人関係や営業の基本が疎かになっている気がしています。
やっぱり訪問頻度とかも大事だと思います。管理職とか上の世代だと、やはり接点回数を気にしていて。
私がいた部署の課長とか部長は、役所の中でも新しいことにチャレンジするタイプの方だったのですが、それでも事業者選定の時に「あの事業者そんなに市役所に来ていなかったよね」みたいな話をしたり。
プロポーザルだと特定の事業者を狙って選定することは当然できませんが、担当者としても、印象の良い事業者には会話の中でそれっぽくヒントを与えちゃいますよね。仕様書も一緒に作り上げた、信頼している事業者に決定してほしいと当然思うので。
木藤:自分が以前の記事に書いた「選定プロセスはフェアだが選定プロセス前はフェアではない」と同じ内容ですね。
むしろそこが自治体営業の醍醐味だと思っています。
木藤:まさに「関係構築」ですね。「営業」というテーマにおいて当たり前のように話されるのに、「自治体営業」というテーマになった途端にあまり触れらない。
金額が安いという理由だけで、全く関わりのない事業者に決定したら不安ですもんね。
私が公務員も営業も経験して感じますが、1回あたりの接点時間を増やす必要はないんですよ。接点回数ですね。
木藤:本当にそうですね。リクルートでも散々叩き込まれました。商談と言えば1回60分で設定されがちですが、1回5分の接点でもいいとよく教わりました。
今日はいろいろお話いただいてありがとうございました。あまりにも意見が同じすぎて、自治体営業を支援する人間として自信がつきました。
ありがとうございました。
最後に
インタビューには載せていない内容も含め、Rさんとは共通点がいくつかあってすごく充実したインタビューの時間でした。
今日の内容をまとめますと、
- 都道府県より狭域の、その地域の中心となる市に優先してアプローチしましょう!
- 自治体営業において大事なのは「自治体の知識」ではなく「営業の基本」!具体的には、接点回数の確保や相手目線に立つことなど。
といった感じでしょうか。
これからも企業様の役に立つ記事を更新していけたらと思います。
今回もありがとうございました!
1994年愛知県豊橋市生まれ。東北大学卒業後、新卒で市役所へ入庁。文化課や中央省庁への出向、転職してリクルートで営業を経験後、株式会社リクロスを創業。リクルート出身のメンバーを中心に自治体営業の支援に取り組みつつ、自治体営業プラスを運営。